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新宿南口のスターバックスでタケダさんと待ち合わせ。
パソコンを買うので、選ぶのに付き合って欲しいとのこと。
彼女にとって初のパソコン
確かに今時のイラストレーターメールアドレスのひとつもなければ
結構不自由かも知れないね。
小走りで現れた彼女は、パソコンのカタログや雑誌のコピーを持参していた。
よれ具合からしてかなり読み込んだと思われ、だいぶ勉強した模様。
「アイエスディーエヌ・・・って便利?」
「うーん、便利だよ。ていうか速いよ」
「速い?」
「通信速度がね」
「・・・?」
まぁ、とにかく買っちゃって使えばいいよ。
そんな会話をしながらヨドバシカメラへ。
グラフィックは特にやるつもりはなくて予算は10万円とのこと
そんなわけで、富士通の10万円デスクトップに決定
最近は10万円でスペック充分なんだね。
ハードディスクとか30ギガもついてんの。
2年前、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買った僕のパソコンの立場は?
と思っちゃうほど。
「あー、決まって良かった。ホントに私もインターネット繋げるかなぁ?」
「簡単だよ。プロバイダー決めちゃって付属のCDロムの指示に従って、
クレジットカードの番号とか入力して・・・」
「クレジットカードがいるん?うち、カード持ってへんで!」
あせると、関西弁に戻るようである。
「あ、このDIONとかいうプロバイダーは口座振替だけでダイジョウブみたいだよ。」
そういって、店頭に並べられているスターター向けの配布CDロムを手渡した。
「これがあれば簡単につなげられるよ」
「ほんまにー?
・・・・はんだごてとかはいらんの?」
は?
はんだごて?

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「収穫したよ」
タコちゃんは夕方のスーパーで僕を見つけるなり歩み寄ってきそう言った。
「どこのやつ?」
「三日月山の南斜面で育てていたやつだよ。今夜は二人で収穫祭をやろう。
夕飯の後に、迎えに行くよ。」
20:00ぴったりにタコちゃんは幌付きのジムニーで迎えにきた。
今夜は満月だから幌を開けて車を走らせよう。
孵化したウミガメが海へ帰る道を壊さないようにルートを注意深くとりながら海岸線を走る。
どこまでも続くビーチの白砂が月の光を吸い込んで、発光している。
なんだか、タコちゃんは大事な話をきりだしたがっているようにみえた。
「たこちゃんがさぁ東京で勤めていたヘアサロンてなんて名前だっけ?」
「ピーク・ア・ブーだよ」
「あ、そうそう どんな意味だっけ?」
「いない・いない・ばあ」
わざと,どうでもいいような話題を探して僕はシリアスな雰囲気をはぐらかしてしまった。
他から耳にした話だとかなり名の知れたヘアスタイリストだったらしい。
だけど、なんでそんなポジションから降りてこんな亜熱帯の島にやってきたのかは
聞いたことがなかった。
もっとも、そんなことをいちいち聞かないのが、この島の作法だ。
なにはともあれ僕は、彼が島に一件しかない床屋にいてくれることがありがたかった。
彼が来るまでは、島のおじいさんが一人で店を切り盛りしていた。
僕が毎回どんな詳細な注文を出したとしてもいつもバリカンで深い刈り上げをして
結局は同じ仕上がりだった。
僕はいつも散髪後にいつも後頭部をさすりながら床屋の鏡に映った自分を見てしまう。
その床屋の待合室につまれていた漫画「カリアゲ君」そっくりだなと思った。
たこちゃんの散髪は芸術的だった。
注意深く、撫でるようにして髪質を確かめる。
まるで彫刻家みたいに。
「フミヤに似てるよね」
「ぜんぜん似てねーだろ」
「いや、頭蓋骨がそっくりなんだ俺のお客さんだったんだよ、フミヤ」
ウソか本当か知らないけど、僕の髪を切りながら、そんなことを言っていた。
彼が創ってくれる自分の頭のシルエットをとても気に入っていた。
ジムニーはパパイヤ農園を貫く細い砂利道を上ってゆく。
たどり着いたのは、ドームのようなガジュマルの森
すっかり目が暗闇に慣れた。
月光が木漏れ日となってまばゆく揺れている。
滝のように枝から地面に降り注いだガジュマルの根に僕たちはもたれかかる。
グリーンぺぺという緑色に発光するキノコがあちこちで点滅している。
本土から、いろんな人間がやってきては、この発光キノコを盗掘したが、
この地でなければ光らない。
さあ、収穫祭だよ。
そう言ってタコちゃんはフィルムケースから乾いた葉を取り出して、手に取った石で砕いた。
丹念に、小さなキセルに詰め込みジッポーで火をつける。
ジッポーのオイルの匂い。
次に、煙草のゴールデンバッドによく似た香ばしい匂いがガジュマルの森を包んだ。
「俺、信用できそうな奴かどうかって髪に触れると、なんか解るんだよね。」
タコちゃんは独り言みたいに、そう言いいながら、僕にキセルを手渡す。
僕は、キセルをゆっくりと口に付け、肺の奥まで吸い込んで、少しの間息を止めた。
タコちゃんが、キセルを吸うと、紅く灯った炎が、彼の顔を優しく照らした。
穏やかな表情をしている。
やがて風が吹くたびに自分が蓑虫のように前後に揺れるので、その浮遊感に
「ふふふ」と笑いが止まらなくなった。
大きな風が吹くと、その度に大きく後ろに振れた。
ガジュマルにもたれかかる僕とタコちゃんが見えた。
自分が寄り添っている木が、とても良い木だとわかった。
ああ、なんて良い木なんだ。知らなかったよ。
無風状態になると僕は、そのまま宙に浮いてしまった。
その時に、思わず息をのんだ。
タコちゃんが寄りかかっているのは悪い木だった。
とても悪い木だ。
枝から降りた気根が、すでに彼からたくさんのものを吸い取って支持根に成長している。
あたりを見渡すとタコちゃんの周りは、全て悪い木だった。
なんでだよ。タコちゃんいい奴なのに。なんでなんだよ。
僕は、声を上げて泣いた。
「おいおいどうした?効きすぎたねこりゃ」タコちゃんは笑った。
数日後の出航日に、タコちゃんが捕まったと聞かされた。
今日の船に乗るらしい。
そう聞いて桟橋に行くと最近島に出稼ぎにやって来ていた護岸工事の作業員たちが
葉っぱの苗を抱えていた。
タコちゃんが三日月山で育てていた苗だ。
タラップの前で少しの間タコちゃんと話すことが出来た。
あの建設作業員さ、麻布署の刑事だったよ。
「いつもナイン・ボールで飲んでただろ。ずっと内偵とってたのさ」
「なんでだよ」
「チクられたんだよ。東京の連中に俺ら、年中そういう足の引っ張り合いをしてのさ。
俺は、もう降りたのに。かつては一緒に働いた仲間だぜ。ちきしょう。」
「もっとも、お互い髪をさわらせなかったけどな」そう言って笑った。
「心配するなよ。おまえとの収穫祭はコーヒーの葉っぱさ。」
この島の珈琲豆は世界一だよな。
最後にそう言い残して、彼は僕の前から消えてしまった。
二度と会うことはなかった。
僕はもう髪を切るのをやめてしまった。
数ヶ月後、東京に戻った。
散々伸びた髪から少し色を抜いてドレッドにした。
鏡に映った僕の髪の毛は、あの夜タコちゃんにまとわりついていた
ガジュマルの気根によく似ていた。

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もし、美とはなにかと訊ねるなら
きっとあらゆる答えがかえってくる。
いまだに、その答えを、いいあてた人なんて、いなかったし
たとえ、みつかった気がしたとしても時の流れとともに蒸発してしまう。
美にかたちをあたえるものはなんですか?
みえることですか?
みえないものをみるためにはどうしたらいいですか?
ぼくの網膜に映る映像のイメージがみることをさまたげている。
たちどまって耳をすまさなければ見えない。
嗅覚をはたらかさなければ見えない。
遠い記憶を、たどらなければ見えない。
もし、この世界がみえないものでつくられているなら
そこに、うつくしいものの、かけらが、あるのならば
そして、どこかにかくさているのいならば、
それを、ぼくは、さがさなければ、いけない。

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みみがさわる
しんくうのうちゅうのささやき
めがさわる
きらめくひかりのすばやいつぶつぶ
てがさわる
きみとぼくをむすぶみえないちから
こころがさわる
あたらしくてふるいものがたりに
くりかえしひそむゆめ
谷川 俊太郎 / 詩

引っ越し以来、休みの日ごとに部屋の整理をしていたのだけれど
今日は、自分のPCの中の本棚、すなわちブックマークの整理をした。
とにかく肥大化していたのだ。
すでにWWWサーバー上にないページや更新がとまって廃屋のようになった
ページの多さに驚く。
その中から、依然自分に向けて光りを放ってくれるページを見つけだし
自分のWEBページからリンク出来るように試みる。
だけどリンクのカテゴライズって結構悩んでしまう。
検索サイト的なコンテンツの分類方法って、イマイチぴんと来ないんだよな。
自分のWEBページにさえアクセスできれば自分にとって必要なWEBページが
全て整理されているようなリンク集にしたい。
そうすれば、世界中どこのインターネットカフェからでも
自分の好きなページを散歩できるからね。
近頃教育界では情報化の波に警笛をならすかのごとく
「インターネットは子供達から現実体験を奪う」なんていう声がすっかり市民権を得ている。
80年代からのファミコンバッシングと同じ構図。
でも違うだろ。
これからの僕たちは土地の呪縛から解放されて自由にどこにでも行く。
バーチャルな意味ではなくて本当に肉体の移動のことね。
そんな時代にインターネットの支援はでかいと思うんだけどな。
WWWの世界は、どこからアクセスしても変わらない。
そんな安心感を旅人や寄留者に与えてくれる。
光りと影があるのは、現実世界もWWWの世界も同じだろう。
どちらの世界でも身につけるべき知恵は、「どう歩くか」だけだろう。

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最近コビは、FAXの上が大好きなのである。
冬の間から春先までは、PCモニターの上でのさばっていた。
それが最近ではFAX
そういう季節なんだね。モニターの上では暑いらしい。
そんなわけでしょっちゅう「♪ピピピッ!ゲンコウウ ヲ セットシテクダサイ」
なんていうエラーメッセージがFAXから鳴り響いている。
FAX送信ボタンを肉球で押したりしているのだ。
最近では、メモリーダイヤルボタンをピポピポッと勝手に押しまくっていたりするので
あわてて止めにはいることが多い。
誰かにつながっちゃうじゃん。
僕の留守中とか、勝手にテブラ通話ボタンと、メモリーダイヤルボタンを
押していたらどうしよう。
友人:「もしもーし?」
コビ :「ニャ・・・」
みたいなやりとりがあったりして。

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週末、なんだかとても、ほっとする。
久しぶりにKと飲んだ。
肩の力が少し抜けた。

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5回目のプレゼンでコテンパン。予想はしていたが悔しい。
気持ちは焦るがじっくり煮詰め直し。
情報過多の、物理的なエラーが脳みそに極度に負荷をかけ、ゴーンとした感じの思い頭痛。
最近、からだをあまり動かしてないのでバランスの悪い疲労を感じる。
このままでは頭でっかちのチブル星人になりそう。

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最近、我が家の周りを住処にしていたあの自由ネコを見かけない。
先日、町内会の総会に出席したら「いつもうろついているあのネコ
にエサを与えないようにしましょう」という意見が出た。
今日は、わざわざ町内会の掲示板にもその旨書かれているのを発見。
はー、僕のかつお節ナンパ作戦ご近所から見透かされていたんだろうか。
自由ネコの暮らしも楽じゃなさそうだね。
どこか、ネコに寛容な町内会へ移動してれば良いのだけれど。
不安定な天気は続いて外は今夜も雨

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20000516

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借りもののコトバに翻弄されて、いつしか視点は拡散していた。
なかなかコアが見つからない。
結局、なにも形に出来ずに一日が終わった。
久しぶりに街で少し強めの酒を飲んだ。
一日眠れば、今は枯渇したようにみえる源泉も潤いをとりもどし
明日には、あたらしいコトバが溢れ出す。
そう信じて今日は眠ろう。

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みるみる雲行きが怪しくなり夕方には、大粒の雨がビルの窓ガラスに
音をたてて叩きつけてくる。
仕事帰り、通勤快速から各駅停車の電車に乗り換えようとしたときに
「センセイ!」と呼び止められた。この春、卒業させた受け持ちの生徒M也だった。
「おお、ひさしぶり!専門学校面白いかぁ?」
「うん、先生こそなんでこんな電車に乗ってるの?」
「いやー、いまちょっと学校はなれて別の仕事なんだよ」
「え、じゃー学校遊びにいってもセンセイいないの?」
彼は、ぼくが降りてきた通勤快速を待っていたところだったので
発車のベルで短い会話が遮られた。
束の間のの再会だった。
M也は、ミュー○音楽院とかいう、
薬用石鹸みたいな名前の音楽学校に通っている。
いわゆるプロミュージシャン養成をうたっている学校。
「専門学校出ればプロのミュージシャンになれると思ってんのか?
ボーカル科ってなんだそりゃ?
ホントにB’Zの稲葉が講師に来ると思ってんの?」
あまりに商業主義な学校の経営姿勢に関する裏情報を聞いていたのと
無認可校の倒産が相次いでいたことそんなネガティブファクターから
在学当時、担任であり進路指導担当だった僕は彼の学校選択に異議を唱えた。
「安易な進路選択をするな」そう僕は言い放って彼とはぶつかったのだ。
今思えば、彼の中にやっと芽生えた夢の若芽を、ブチブチ抜いていたなと思う。
結局、推薦書や調査書を書いたのだが彼は合格しても僕にしばらく合格報告に来なかった。
彼のささやかな抗議だったらしい。
しばらくぶりに会った彼は髪型を変えてLUNA SEAのボーカルを意識していた。
うん、最初はスタイルから入るものだよ。
少し大人びていたM也に会えてちょっと嬉しくなった。

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