放課後、掃除当番と一緒に教室掃除をしていたら、M山が珍しく話しかけてきた。
M山は、吃音気味の男の子で、友達も多くはない。
ボーッとしているが、パーフェクトな鉄道ファンで、河辺駅に新型の電圧交換機(って何だ?)
が導入された(そんなこと、僕は気にかけたこともないぞ)ときには、朝4時に起きて見に行ったそうだ。
(始発の前に、電流を放電するときの音がたまらないらしい、そんなにいいのか!?M山!)
彼の気弱さにつけ込んでちょっかい出す生徒もいるので、新学期から少し気にかけていた。
学期はじめの掃除当番の時に、僕の方から「森山、新しいクラスはどう?話す人とかいるか?」と、
声をかけると「は、は、は、話してるじゃないですか...」と、答えたきりだったので、
あまり気にしているようにとられても逆効果だなと思って、ほっておいたのだが、
今日は彼の方から「せ、せ、先生は、ま、また、又、し、し、島に、も、も、もどりたい?」と、
話しかけてきたのが意外で、少し嬉しかった。「又、行ってみたいよ、島の高校にも」と答えると、
「で、で、でも、て、鉄道、な、無いんでしょ、く、く、クラスもひ、ひ、ひ、一つでしょ」などと、
少し時間をかけて、話が弾んだのは収穫だった。