ヒロを見送りに北駅まで行く
スーツケースには冬物の服まで詰めたのだという。
たくさんの人が通り過ぎるこの街では
「どのようにやって来るのか」ということより
「どのようにして、いつ帰るのか」ということの方が大切なのだ。
空港行きの特急列車の扉は音もなく閉まる。
20030731
日本から来ている某コスメ・メーカーの方々と、ARMANI/Nobuで昼食
カウンターの奥には板前さんがひかえ、隣のテーブルのイタリア人達は
テンプラとサッポロビールを頼んでいる。
ヨーロピアン・モダンのインテリアで統一された店内にはDJブースがある。
どこなんだここは?おそるべしアルマーニ
先方からは「ミラノで活動するクリエィターの生の声を聞きたい」という要望なので
ユリに来てもらって、ざっくばらんに語ってもらう。
お互いに、柔らかい来雰囲気の中での情報交換
楽しい時間でした。
20030726
ユリの仕事場である、YURIPARKのLABORATORIO(工房)を訪ねる。
もの作りの現場には古い編み機にアイロン、ミシンがある。
ミラノですら、多くのニット工房が古い機械とはお別れして
最新のオートメーションを導入している。
ユリは、この古い機械と育ってきた職人さんを誰よりも大切にして
人、機械、糸に美しい流れを生むこと最優先に仕事している。
職人のおばあさんリナもやってきて、少しだけ話したらあたたかい気持ちになりました。
寒い季節になったら、この工房から生まれるカシミヤを身に着けてみたい。
20030725
人のアルファ155で、街の外へと連れ出してもらい
郊外にある、Vigevano(ヴィジェヴァーノ)とMonza(モンツァ)をはしごする。
Vigevanoのドゥオーモ広場は、美しい長方形の石畳を柱廊が囲み
城の塔が広場を見下ろしている。
城の内部を覗くと、ひんやりとした回廊が神秘的な空間をつくりあげている。
ランチを食べて、夕刻近くにMonzaに移動する。
美しいドゥオーモの内部にはいると、ステンドグラスから西日が溢れて
神聖な静寂と共に、会堂をオレンジ色に染めている。
20030724
ヨンランさんを訪ねるため、彼女のオフィスである
ANDREA FENZIのプレスルームへ行く。
上質なマテリアルで編み上げられた秋物の新作が並ぶ
美しい色彩のグラデーションに、ヒロの選んだ花が活きている。
愛情に満ちた彼女の仕事は祝福され
その結果、このようなワーキングスペースが与えられているのだと思った。
20030723
ひさしぶりにとても深く眠った。
目覚めたとき、何処にいるのか解らなかった。
教会の鐘の音がする。
当然冷蔵庫の中は空っぽで
今日が水曜日であることを思い出す。
メルカート(早朝市場)の日
道ばたに、季節の収穫物が眩い色彩で並ぶ。
聞き慣れない言葉が飛び交う。
サラミと生ハムを切ってもらい、パンを買う。
大きな房のマスカットも手に入れて、
冷蔵庫の中に、再び色彩が戻った。
20030722
トランジットの待ち時間を、チューリッヒの空港で過ごしている。
昨夜は一時間くらいしか眠ることができなかった。
あの大きな感動をピークに、人々はまた、そして僕も
色々なことを日常の中で、忘れていくのだろうか?
感情に頼るのではなく、僕は一つの事実として心に刻もう。
けっして時と共に移り変わったりしないことがあることを
20030715
強い雨が降ったり、肌寒くなったり
天気にかかわらず、いつも同じところをうろうろしているノラ猫
ケンカのせいか、片目が失明しているらしく
逃げもしないけれど、媚びもしない。
こちらが近づきすぎると、のっそりと
どこかへ行ってしまう。
20030709
髪の毛一本すら、自分では白くも黒くもできない。
祈ることしかできない。
20030705
夜の新宿を少しだけ歩いた。
猥雑な雑踏にも、どこか安堵を感じる。
「交友」と訳された言葉の語源は
ギリシャ語の「コイノニア」で
「共に汚れる」という意味が含まれている。
友人の手紙にはそう書かれていた。