夏の夕方の蒼い時間は都会だったとしても好きな時間です。
今日も仕事を終えてから目黒へ行きました。
昨日とは別の研究室の飲み会に誘われていたのです。
最近の僕は、以前は意識的に避けていた仕事がらみの誘いもあまり断ったりしなくなりました。
今日も殆ど初対面の人達でした。その人達は皆仕事に対する姿勢が真摯で、人当たりもよく、
真面目でした。
かれらは以前から僕の仕事の内容にとても興味を持ってくれているようでした。
だから僕も、可能な限り丁寧に言葉を選び自分の仕事についての話をしました。
だけどそんな時には、いつも居心地の悪さをどこかに感じています。
自分自身の仕事を人に伝えながらそれは本当に僕の仕事なのだろうか
そもそも僕は何故こんなところにいるのだろう
そんな風に、他人の仕事や人生のことを誰かになりすまして語っているような気持ちに
突如覆われてしまうのです。
僕は自分のことが昔よりもわかります。
全てのことをゼロからはじめるのが好きで生み出たものに対して
何度も丹念に手を加えたり修正したりしながらたとえどんなに小さくても、
形にしていくことを愛します。
そしてそれをごく少数の心開ける人だけと分かち合うことに、このうえない喜びを
感じる人間なのです。
だけどどうやら、僕の仕事はある大きな流れを継承しその流れを変えることなく発展させ、
その成果を大々的に大勢の人に還元させることを求められているようです。
そして、なによりも組織の一員として、その仕事を完成させなければいけないのです。
組織の中では、ぼくは少しだけユニークな方法で仕事をしているように見られているようです。
だけど、そんなことはちっともユニークではないことを僕自身が一番良く知っています。
誰かの衣装を借りて、許される範囲で振り付けをアレンジしてダンスをしているだけなのです。
僕は人の期待に応えなかったりがっかりさせることが怖いのです。
そして僕は拍手をされない踊りをするのが怖いのです。
あるいはステージの幕が開いたとき観客がまばらなのが怖いのです。
今のステージは、無事に公演を成功させなければいけません。
だから、いまは誰かの手拍子でただ踊ります。
いつかは自分の創った衣装をまとう日のことを思いながら。