20000803

20000803.jpg
今日は目黒の研究室のお誘いで各地の日本酒を揃えた店で飲みました。
大して飲みたい気持ちではなかったのだけれど断る理由もなかったのです。
どちらにしろ、どこかで夕飯を食べるわけだし。
結局のところ、二次会のカラオケに途中まで付き合い22:37分新宿発の
ホームライナーに乗って帰途につきました。これがなかなか素敵な列車なのです。
500円の特急券を買うのですが、途中何処にも停まらずに
僕の目指す駅までただひたすらに西へ向かうのです。
サスペンションが普通列車と違うのか、滑るような乗りごごちで、
見慣れた車窓からの景色が違った色彩で流れてゆきます。
列車の中で、村上春樹の「国境の南・太陽の西」の文庫本を読みました。
8年前にハードカヴァーで読んだ本です。
最近では,新刊のノベルを次々に読み漁りたいという欲求は無くむしろ、
一度手にしたことがあって、好き嫌いは別としても自分の中に宿題のようにして
引っかかっているような本を検証し直すような気持ちで読みたくなるのです。
本のせいなのか、あるいはいつもと違うように流れ去る車窓の夜景のせいなのか
わからないのだけれど16才だったあなたのことを想い出しました。
過ぎ去った時間のことを想うと、なんだかカチコチに固まってしまった陶土を
手にしたような気持ちになります。
自分がおかした愚かな振る舞いのことなども想い出しました。
でも、それはかつて判断を誤ったというよりはむしろ僕という人間の
傾向や弱さの表れだったのだと今は思います。
10代のころから自分の本質は変わらないままでいつのまにか30代になっているのです。
固まった陶土は、もう一度集めて水に浸して土練機で練り直せば、新しい器に作り替える
ことが出来るけれど過ぎ去った時間はそういう訳にはいかないのを僕は知っています。
だから、今という時を記しておきたいと思うのかもしれません。
次に神宮の森や、新宿の高層ビルがよく見える高校の屋上であなたから手渡された
ノートのことを想い出しました。
「これからの時間を書き記し欲しい」と言って手渡してくれた
深緑のスェードの表紙のノートです。
その夕方の空気を思い返した瞬間不思議な時の摂理の謎が解け
まるで魔法のように過ぎ去った時間の感触が、ひび割れて固まった陶土から
あの柔らかなスェード表紙のノートの手触りへと変わってゆきました。

投稿者:uchimura_it|Comments (0)

コメントしてください

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です