練馬にある、ちひろ美術館へ行く。
今まで、何度となくこの美術館を通り過ぎていたが足を踏み入れようとはしなかった。
何故だかよくわからないけれど自分の表現とはなんの関わりもない作家のような気がして
そっぽを向いていたのだ。
何故なんだろう。
美術館は、とても変わった作りで不思議な順路を辿りながら
ひとつひとつの作品を見てまわった。
線や色から、作家の愛情に満ちた視線がにじみ出ている。
それは、たんなるファンタジーの世界ではなく現実の世界へ向けた
強く具体的なメッセージを秘めていて受け止めようとすると、涙ぐまずにいられなかった。
幼い頃、絵本で良く知っていた作家なのにはじめて出会う作家のような気がした。
受けての自分が、年を重ねてしまったからだろう。
作家のアトリエが再現された部屋を見る。
どこからか、移設されて再現されたとは思えない。
あまりにも、主の不在だけが際だつアトリエの空気だ。
そこで初めて気づいた。
この美術館は、作家の自宅を改造してつくられたもので。
目の前にある、アトリエだけが当時のままだったのだ。