20011105

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中野にある、古い名曲喫茶で珈琲を啜っていたら
突然2枚のドローゥイングを、見知らぬ女性から手渡された。

その女性は、僕の斜め前の座席に座っていたのだが
上体を伸ばすようにして、僕のテーブルに突然差し出してきたのだ。

驚いて「何ですか?」と訊ねたのだが、何もいわずにこちらを見ている。
「あなたが描いたんですか?」と、さらに問いかけたのだけれど
返答はなかった。とにかく何も言わない。

あまり、相手の顔を見ていても悪い気がして
そのドローゥイングに視線を落としていたら、女性は消えてしまった。

アカデミックに囚われていない、悪くない線だと思った。
稚拙だけれど、何処か惹かれるドローゥイング。

そういえば、似たような感覚を、この夏に
ハンブルグの郊外で体験した。

そこは、明け方の牧草地だったのだけれど
自動車にもたれかかるようにして座っている女性に
「あなたの名前を教えて」と呼び止められたのだ。

一見、リゼルグ酸かMDMA系の依存症に見えたのだけれど
その女性の側までいって、腰を落として「Hi」と挨拶したら

突然、両手で顔を挟まれて
額と額をつき合わされ、こう言われたのだ。

「私の物語を、お願いね。」

投稿者:uchimura_it|Comments (0)

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