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研究所にて、恭しい式典のもと僕の一年間にわたる研究事業はピリオドをうった。
式場からは、眼下に満開の桜がみえる。
季節が一回りしたのだ。
一年前、式辞を述べた研究所所長は3ヶ月前に他界した。
38年間続いたこの事業も財政難の折り、今日の式典をもって撤廃され研究所も姿を変える。
暫定的に就任した所長代理の訓辞は、役人にしては冴えている。
そう、感心していたら、あとになって信頼している上司から
「あの原稿、実は俺が書いたんだよ。」とうち明けられた。
官僚はいつも、自分の言葉を持たないし決して地雷を踏んだりしないのだ。
この一年間、不思議の国にいるようだった。
僕も失敗は許されなかったし、うまくダンスをするよう心掛けた。
色んな人たちに出会った。
息を飲むようなロジックを構築し、知的機動戦に長けたクレバーな人が多かったけれど、
人間味という点で中身は空っぽという人種も少なくなかった。
もっとも、行政の中核に上りつめたいのならそんな「中身」など必要としない。
夕方からは目黒で、部署を超えて交流のあった同僚とシンパシーを感じていた
上司の11名で飲んだ。
「君たちとは、もしかしたらもう会えないかも知れないけれど」
と前置きして話してくれた上司の言葉がなんだかとても誠実で
少し救われた気分になるとともに、終わったのだなと実感した。
二次会の誘いは断り、一人帰る夜道で仕事をやり遂げた自分を少し誉めたくなった。
こんな日は、あなたがいてくれると良かったのに

投稿者:uchimura_it|Comments (0)

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