久しぶりにミラノの中心部へ出る。
大聖堂広場のすぐ傍にあるラジョーネ広場で開かれている展覧会を観に行くためだ。
“Caravaggio, una mostra “impossibile”(あり得ないカラヴァッジオ展)と題された
展覧会のポスターや広告が、昨年からミラノの街に溢れ、一体どれだけの展示規模の
カラヴァッジオの大回顧展になるのだろうかと、以前からとても楽しみにしていたのだ。
ところが、展覧会会場に踏み込んで一瞬にして、僕が育てていた期待は落胆に変わった。
なんと、展覧会会場には、彼の作品の「本物」は一点として展示されていなかった。
作品はすべてデジタル印刷されたものがライトボックスに貼られていて、それらの作品を
カラヴァッジオに扮したバロック時代の衣装をまとった俳優が、それはもう過剰な演技で
解説してまわるという「色もの企画」だったのだ。
そんなことは、ポスターの情報からはどこからも読み取れない。
会場で心から「あり得ないー。」と叫んだ僕は、つくづく彼の筆跡やリンシード油がまだ香る
ような、彼の「本物の」作品に触れたいと願いつつ、涙目で家路についたのでした。
10年前の今日
←今日もそこにいてくださってありがとう。