毎朝の通勤でモノレールの駅に向かう途中Y字路に挟まれた家がある。
その家にはいつも雑種の犬がつながれていて、声をかけるのが僕の日課だった。
毎日決まった時間にその家の前を通ると、ワンコはいつだって閉ざされた雨戸に
前足をかけて家の主が起き出すのを待っている。
僕がちょと寝坊して、いつもより遅い時間にその家の前を通ると、雨戸は開いていて
ワンコは嬉しそうにエサの入った古い鍋に顔を突っ込んで尻尾を振っている。
主の家からは、朝ご飯の支度のにおいと朝のニュースの音が通りに少し漂っている。
だけど、最近ではいつの時間に通ってもその家の雨戸は閉ざされたままで、いつの間にか
ワンコもいなくなっていた。
今日、仕事の帰りにその家の前を通ったら家は解体され、きれいに整地されていた。
ご丁寧に、新しい黒い土が被してあってY字路に挟まれていた家の跡地はまるで
平べったいティラミスみたいだった。
きっと引っ越しちゃっただけなんだろうけど、なんだか寂しい。
あのワンコ、新しい家で飼い主と一緒に幸せにしているといいけど。