現場で、ふたりの講師に引継をする。
職員室からは、僕の机はなくなってしまうのでいらなくなった書類などを全て
シュレッダーにかけ引き出しをひっくり返して空にする。
やれやれ、なんて無駄な物に囲まれていたのだろう。
美術室に油絵を仕上げに来たA野に「センセイいなくなっちゃうんだね」と言われる。
前々から言おうと思ってたんだよ。ごめんごめん。
彼女が完成させた静物画を額装してあげるとすごく喜んでいた。
絵は、これからも描き続けなよ。
夜に、明日からの通勤のための定期を買いにモノレールに乗る。
定期券を買うなんて、実に高校生の時以来だ。
明日からは、毎日このモノレールと中央線を乗り継ぐのか
などと思いつつ、気持ちはまるで社会復帰をめざすリハビリ患者のようだ。
明日からの日常がまるで読めない。
連日の、引っ越しやら引継のドタバタで疲労はピークに達しているが、
とにかく始まるのだ。
つかの間の休眠は終わった。