19991121

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風邪ひき3日目。
熟睡したのに良くならない。
AM8:00に一度目が覚め、
メールチェックなどする。
再び目を覚ますとPM3:00だった。
一日を、ベッドの中で棒に振るのは悔しいので、
起き出す。
お気に入りのCDをピックアップし、
アルファベット順にテーブルに並べて整理する。
そのうちwebにcd紹介のコンテンツをつくろう。
外に出られないと、気が滅入る。
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   「優」の事
「西風」の季節になると、ろくに外も歩けなくなる。
迷路のような、路地の坂道を下ろうとすると、
海から吹き上げてくる突風のせいで、呼吸もできない。
その季節は、シェルターの中にこもるように
誰もが家の中で過ごす。
以前暮らした亜熱帯の島とは違って、
この島は、冬が本当に忌まわしい孤独を連れてくる。
ダイビングや釣り目的の観光客すら来なくなる。
僕が住んでいた家は、島の中では珍しい(というか唯一の)
鉄筋づくりのマンションだった。
それでも、まともに西風をくらうと地震のように揺れた。
他の木造住宅は、良く吹き飛ばないものだと不思議にさえ思った。
「優」の事について憶えている事を書き記しておこう。
彼は、島では天才的なサーファーで、高校生だった。
そして、島一番のボスだった。
彼はちょっとした暴力事件をおこして自宅謹慎になったとき、
僕は、日々彼に課せられた「反省文」を添削した。
彼は毎日、一行しか書かない。
「今日も西風だった。」
他の教師は、もっとノート一杯に「反省の気持ち」
を書き記すべきだと憤慨したが、僕は彼の一行が気にいっていた。
「今日は波が高すぎる」
翌日は
「いつになったらこの西風が止むのか、イライラする。」
「優」は難しいヤツだと、周囲から言われていたが
島に来たばかりの僕をすんなり受け入れていた。
そのおかげで、僕はずいぶんこの島での教師生活がやりやすかった。
「優」はいつもサーファーとして誰よりも海に向き合っていた。
海への愛情を語り、同時に憎悪していた。
彼が、毎日一行だけで綴る言葉に、その愛憎が込められていた。
彼の謹慎があけるにあたって、「これからやりたいこと」
と題した作文も一行だけだった。
「西風が落ち着いたときにサーフィンがしたい」
僕は、少し吹き出しそうになって彼に訊ねた。
「サーフィンだけじゃ飽きないか?」
彼もまたニヤリとして、ゆっくりと僕の質問に答えた。
「飽きねーよ。一度だって同じ波が来たことは無い。」

投稿者:uchimura_it|Comments (0)

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