日本に滞在していた際に、姉の車に乗ったらU2の新譜[ No Line On The Horizon ]が車内に
転がっていたので、早速iPhoneに取り込んで、ミラノに帰ってからもよく聴いています。
サウンドもとても良いのだけれど、このジャケット写真、たまらなく良いですよね。
僕が美大生時代から敬愛してやまない写真家、杉本博司さんの「海景」シリーズから一枚
U2のボノが以前からジャケットに使いたいと考えていたそうで、日本人としてちょっと誇らしい。
杉本博司さんは、ボノからオファーを受けたとき、この写真の上にバンド名やアルバム名といった
文字の類を一切レイアウトしないこと、トリミングしないことを条件に、この写真を提供したらしい。
写真使用のギャラも受け取らなくて、変わりにこのアルバムの楽曲使用権を自分の展覧会や
プロジェクトのために、U2側からもらったのだとか。そういう、お互いの才能を交換する仕組み
これからの時代の、新しいあり方(原始回帰とも言えるけど)なのではないでしょうか。
自分の才能や時間を切り売りして現金化するのではなく、無償で他の人に提供し
自分も誰かの惜しみない愛で生かされていくスタイルこそ、いつまでも残るのではないかな。
などという戯言は、理想論で、綺麗事すぎるでしょうか。
最近、僕の行きつけは中国人が経営する床屋さん。彼らは何処よりも安い価格(8ユーロ)
くらいで、とても丁寧にカットをしてくれます。
イタリア人の床屋は、あまり上手ではないのですが、価格はその三倍以上なので
中国人の床屋には、南米やフィリピンからの移民、お金のない日本人宣教師(僕のことだ)
には大変有り難く、国連会議場のように、さまざまな人種で混み合っています。
また、僕が車を預かってもらっているガレージは、出稼ぎのブラジル人ファミリーが働いていて
24時間そこで番をしていて、僕が日本から戻る日に、サービスで車を洗ってくれていました。
こういったイタリアに流入してくる外国人の労働力は、イタリアを支えているのと同時に
イタリア人にとって脅威にもなっている面もある。
「イタリアから外国人が出て行ってくれたら、昔のよきイタリアが戻る。」とか真顔で言う
イタリア人も稀にいます。
心情的には理解できる面もあるのですが、そうであるならばコロンビアの農園でつくられた
珈琲豆でエスプレッソを飲むことも、シンガポールでつくられているアップルコンピュータを
使うことも、トヨタの車に乗ることも、そういう人は止めたら良いのではと内心思ったりします。
U2の新譜の話に戻るけれど、[ No Line On The Horizon ]というのは素敵な言葉ですね。
写真のように「ぼやっとした水平線」と訳すこともできるし、「水平線に国境はない。」とも
意訳することもできますよね。U2は、どういう思いをこめてこのタイトルと写真を選んだのかな。
←今日もそこにいてくださってありがとう。
才能の交換っていいですね。素晴らしいエピソードをありがとうございます。最近はクリエイティブコモンズなどが出て来て自由化が進んで来ていますが、お互いに足りないところを補いあうのも芸術的ですから、もっと促進できたらいいですよね。彼らが羨ましいです。
>イケ
クリエイティブコモンズは、良い動きですよね。
共有すること、分けあうことが見直されていると思います。今まで、奪いあいすぎてきた反動でしょうね。