昼休みの門番をしながら、生活指導部の峰岸先生から、
今回の美術部女子が絡んだ、いじめの概要を聞いた。
いじめられたのは、誰から見ても「とろい」持田さん。
彼女たちにとっては「うざい」存在故にターゲットになった。
持田さんを「ぼこる」イベントのシナリオ・演出を担当したのが
美術部の女子二人、蒲田と鰐沢。
鰐沢が、持田にニセのラブレターを書いた。「放課後、昇降口で待っています」と
いう内容を鵜呑みにして、緊張気味に待っていた持田を、女子6人くらいで笑った。
その後、公園につれ行き、料理したのだ。
皆で順にいろんな質問を浴びせる。その質問に30秒以内に答えられなかったら
「平手打ち」というルールで、皆楽しんだそうだ。
蒲田は、手は出さないものの、このイベントを楽しんだ観衆の一人だ。
この日は、美術部の活動日だったので、放課後、廊下で彼女たちに会って
「今日、部活やるぞ」と僕は声をかけていた。
「先生、今日私たち用事があるんです!今日は失礼します」と、嬉々として
去っていったのを覚えている。お祭りに出かけていく表情だった。
鰐沢は、生活指導部の教師から事情を聞かれ、そのときの様子を再現して
話すとき、ついその時の恍惚感が甦ってしまい、笑ってしまうのだそうだ。
蒲田にしても、謹慎の申し渡しで、熱く説諭する校長の前で、薄笑いを見せたという。
「やれやれ」と思った。謹慎解除後、この二人は美術部に戻ってくるのだろうか。
怒り以前に、ぼくは「ニュータイプ」に対して、語るべき言葉など、未だ持っていないのだ。
今日の美術部は、2年の男子6名が寄り集まって、秋の文化祭の企画を考えていた。
かなり盛り上がるのだ。
部長の林に「先生、1年の女子、最近来ないっすね」といわれたので、
「男だけってのも、またいいかもよ」と、意味のない返答をした。